台風15号の千葉県下施設園芸への被害

2019年9月9日に関東地方を襲った台風15号の被害が千葉県、東京都、神奈川県、茨城県でみられます。今回の台風の特徴として、暴風雨圏がコンパクトながら強力な勢力を保ち、また上陸前にはさらに勢力をあげていたこと、台風の速度が30km/h程度と早く、警報は発せられていたものの早朝にあっという間に接近して大被害をもたらしたことがあげられます。復旧の途中ではありますが、9月9日の降水量と風速のデータをアメダスから拾い整理してみました。

当日のアメダス(千葉)の気象データ

台風が上陸した千葉市中央区では最大瞬間風速で57.5m/sという突風が記録(島嶼部を除く関東地方では過去最大の風速)されていますが、アメダスデータでは20m/s以上の強風が明け方に連続しています。

台風が上陸したエリアにある千葉市中心街では倒木が目立つ程度で、家屋や施設への大きな被害はみられませんでした。画像は千葉駅と千葉県庁の間にある商店街での倒木です。

千葉市中央区銀座通りの倒木(9月9日午前に筆者撮影)

当日のアメダス(館山)の気象データ

今回、被害の大きかった館山のアメダスです。千葉に比べ風のピーク時間帯は早く、また20m/s以上の強風が長く吹いています。瞬間最大風速も千葉ほどではありませんが、40m/s台であったようです。また同じ時間帯に千葉以上の集中豪雨が起きています。

 

(参考)2018年9月の台風21号でのアメダス(友ケ島:和歌山県)のデータ

昨年、近畿地方に大きな被害をもたらした台風21号の和歌山県でのアメダスデータです。このアメダスポイントの近くには、大きな被害を受けたカゴメ系列の加太菜園(株)がありました(カゴメでは事業再開を断念し会社を解散)。30m/s以上の強風がピーク時間帯で吹き、瞬間最大風速では40m/s以上でした。また8月には台風20号による強風被害もあり、ダブルパンチを近畿地方では受けています。加太菜園の施設はフェンロー型のガラス温室でしたが、二度の台風で壊滅的な被害を受けています。

千葉県下の施設園芸の被害状況

千葉県のアメダスデータと比べると、和歌山県の台風21号のピークの風の方が強くみえますが、千葉県でも過去に記録されていない強風が吹いたことで、施設園芸に大きな被害が発生しています。

千葉県の台風被害の翌日9月10日13時での発表では、ビニールハウス等の被害が247ha(八街市、旭市、君津市)、ガラス室の被害が11ha(袖ケ浦市、木更津市、一宮町)とあります。また施設野菜と思われるトマトの被害は73ha(八街市、山武市、銚子市)とあります。千葉県内の施設園芸面積は1800ha程度ですので、この時点でも1割以上が被害を受けていたことになり、ここには表れていない南房総地域などの調査が進めばさらに大きな被害があきらかになるはずです。

※追記:9月17日10時での発表では、ビニールハウス等の被害が379ha(八街市、富里市、旭市)、ガラス室の被害が21ha(南房総市、木更津市、袖ケ浦市)とあります。また施設野菜と思われるトマトの被害は126ha(八街市、富里市、山武市)とあり、なお調査中ながら被害は増大しています。

強風に対する耐候性のある施設では大きな被害が無かったとのお話も聞いており、実際の強風の状況と施設の設計条件などによる被害状況について、千葉県においても詳細な調査が望まれます。四国や九州などの台風常襲地帯に比べると関東地方の施設園芸での台風対策はまだまだであったと思います。それでも補助事業で建設された鉄骨ハウスなどの施設は耐候性基準を満たし、それなりの強度を保っていたはずです。また一般のパイプハウスであっても太い補強材を用いた強化型の施設が近年は導入されており、そうした施設の強度についても調査や検証が望まれます。