コロナ禍での野菜の消費動向と施設園芸の将来

新型コロナウイルスの感染拡大により、ビジネスマンや消費者のライフスタイルにも大きな変化が起こっています。日常生活にかかせない野菜の消費にもその影響が出ており、今後の展望なども含め、新聞記事を中心に整理をいたしました。

好調な野菜販売

日本農業新聞2020年5月12日付け記事に、4月の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)が掲載されています。野菜主要14品目の価格が平年(過去5年平均)比2%高、販売量も平年比3%高と増加とあり、野菜販売が好調であることが伺えます。また出荷増による価格低下が起こる時期にもかかわらず、価格は3月より13%増となっており、堅調な需要に裏付けられていると言えるでしょう。

品目別にみると、キムチ需要に支えられたハクサイの価格が急騰、ここ数年間は低迷したジャガイモも値を戻しつつあります。果菜類ではキュウリ、ナス、トマト、ピーマンのいずれも販売量は前年より10~20%程度低下しているものの、価格は上昇し販売額を支えています。特にピーマンとキュウリの価格が伸びています。

業界・業態別の動向は様々

また同新聞は5月22日から連載記事として「コロナ禍の業界動向」を掲載、コンビニ苦戦・過去最大の減少幅・巣ごもりで生鮮は増(21日付け)、スーパー販売好調・内食需要伸び鮮明・食品売上高12%増に(22日付け)、大打撃受けた外食・居酒屋系が9割減・持ち帰り傾向強まる(26日付け)、宅配利便性に注目・外出自粛で注文増・生鮮野菜、冷食伸びる(27日付け)とあります。

特にスーパー販売が好調なことと、外食の打撃が特徴で、全体の需要は12日の記事にあるように数%の増であり、コロナ禍では野菜の需要は伸びているものと考えられます。これは巣籠り生活により家庭での調理に時間が割かれるようになっていること、健康と免疫力向上のために野菜摂取量を増やす傾向などが背景にあるのでしょう。野菜への注目度も、この数カ月で高まっているはずです。最近では、野菜を中心としたメニュー作り、例えばキャベツのメニューやホウレンソウのメニューを主婦は考えている、というお話を農産物流通の専門家より伺ったこともあります。

さらに、本日5月31日付けの同紙一面記事には、「冷凍野菜異例の伸び」として、日本生活協同組合連合会のプライベートブランドの冷凍野菜の4月供給高が前年同月比37%増とあります。背景には、毎日の調理に負担を感じ冷凍品を買う人が増えている、とあります。また国産野菜の人気が高く、大手冷凍食品メーカーでは、エダマメ、ホウレンソウ、肉入りのカット野菜ミックスなどが伸びている、とあります。

マイナス面と今度の見通し

好調な野菜需要の陰には、観光や外食、給食向け需要の激減もあり、一概には言えないことも多くあります。また贈答需要や輸出向けの先行きにも不透明感があり、商品規格や仕向け先を変えたり、販促を強めるなどの産地の対応が紹介されています(5月31日付け同紙1面トップ記事)。こうした分野の需要減が今後どの程度の回復が見込めるかですが、外食や居酒屋での飲食形態は変わらざるを得ない面もあり、従来通りにはならない可能性が高いと考えれます。またインバウンド需要も当面は期待できないものでしょう。

今後は一定の揺り戻しがあるはずですが、消費者のライフスタイルの変化が定着することで、野菜への需要はしばらく高まり続けるのではないかと考えられます。また産地や生産者も需要に対する供給責任をまっとうするよう努力をされていることと思います。

野菜生産と供給での制約条件

生鮮野菜の生産と供給の上での制約条件として、労働力と物流の2点が考えられます。

労働力の面では外国人技能実習生が日本への入国制限により新たな受入れに制限がかかっていることがあげられます。施設園芸の大規模経営体では受入れが多く見られており、こちらも先行きの不透明感がみられます。帰国予定の実習生に対する延長措置なども取られていますが、外国人に依存するような労働力の体制には、一定の見直しが必要になるように思われます。

一方で、宿泊業や観光業などで休業中の人たちを農業の生産現場に紹介する動きもみられています。現在は季節労働力としての受入れが主と思われます。今後は単純労働としてではなく、他産業からの優秀な人材を受け入れ、経営者の片腕になってもらうような動きにつながっていくことが期待されます。人材面での施設園芸の強化はまだまだ必要に思われますが、個々の労働者の生産性向上の余地もあるはずです。

物流の面では、ドライバー確保の難しさに伴い物流費が高騰し、特に遠隔地からの輸送には便の手配などでも制約が生じているように伺っています。一方でコロナ禍でのドライバーの感染リスクもあり、実際の青果物流では様々な対策をしながら消費地への供給を担っていることと思われます。

国土交通省では、2024年3月迄の時限措置としてトラックに標準運賃を示し運賃適正化を促し、不当な安い運賃での配送の防止策としています(同紙4月25日付け)。またバラバラであったパレット規格の統一化に動き出し、荷物の積み下ろし作業の効率化に向けた動きも加速しそうです。現在のT11型(1100mm×1100mm)とT12型(1000mm×1200mm)を基本として、段ボール規格もパレット規格に合わせ、納品伝票のサイズや書式、QRコード等の標準化も進めるとあります(同紙5月17日付け)。

農業、施設園芸の業界は、こうした外部環境の変化を大きく受けています。今後は他の業界などと一体になって課題を解決することが多くなるでしょう。農業界の枠にとどまらず視野を広げていくことが未来への切り口になるはずです。